大都市圏ではない長崎県佐世保市にあるテーマパーク、ハウステンボス。開業以來18年間赤字だった同社を引き受けて、たちまち黒字にした澤田秀雄ハウステンボス社長(HIS會長)にハウステンボスの潛在力を聞いてみた。
-― ロボットが接客する「変なホテル」が話題ですね。
「ロボットホテルは予想以上に世界のメディアが注目してくれました。普通のホテルのオープンなら、取材陣は地元の新聞社やテレビ局ぐらいでしょう。7月の変なホテルのオープニングの時には、世界から60社ぐらいメディアが取材に來て、驚きました。今、世界があのホテルを知っているといっても、そうオーバーではないでしょう」
―― ネーミングがおもしろいですね。
「変化し、進化するホテルという意味です。ロボットの技術はどんどん進化しています。フロントがロボットで、荷物を預けるのがアームロボットで、荷物を運ぶロボットがいます。部屋の中には小さなチューリーロボットがいます。世界一生産性の高いホテルをめざして、まだまだ進化していくと思います。5年、10年と経ったら三つ星?四つ星のホテルは皆ロボットホテルになると思いますよ。ロボットホテルの第一號として歴史に殘るのではないでしょうか」
―― どうしてロボットホテルを始めようと思われたのですか?
「僕はハウステンボスではホテル住まいをしています。住んでいるうちに、もっと効率化できるのでは、と思い、世界一生産性の高いホテルを作ってみようじゃないかと考えました。それには自動化、ロボット化しないと生産性が上がりません。今あのホテルを10人ぐらいで運営していますが、將來は2~3人でできるようにしたいと考えています。そのためにロボットを進化させ、掃除はロボットにどうさせればいいかなど、研究しているのです」
―― 10人にしたって相當少ないわけですよね。普通はあのくらいのホテルだと何人ぐらい必要なのですか?
「30人や50人は必要なのじゃないですかね。それを數人で回せるホテルにしたい。1~2年したらできるのではないでしょうか」
―― 1~2年で、ですか?
「世界で最も競爭力のあるホテルができあがります。まだまだ、改良の余地はありますね。生産性の高いホテルを作ろうと思った結論が、自動化とロボット化だったのです。人の代わりにロボットが対応すれば、人件費がかからないのです」
「ホテルの3大経費は人件費?光熱費?建設費です。いかにしたら人件費を減らせるか、光熱費を減らせるか。東大研究所、各企業の研究所などに集まっていただき、知恵を絞ってもらっています」
ーー 光熱費も減らすのですか?
「変なホテルにはスイッチがありません。全部センサーで電気をつけます。人がいなくなって2、3分したらセンサーで消えます。例えば洗面所で手を洗って、うろうろしていたら消えないのですが、出て2、3分すると消えます。當然、消費電力の少ないLEDも使っています。省エネのホテルなのです。外出したときもすべての電気が自然に消えます。さらに省エネを進められるよう色々と研究しています」
-- 人によるサービスの方が良いという人もいると思うのですが。
「僕は五つ星のホテルは今後も人のサービスの方が良いと思っています。本當にいいサービスを受けたい場合は、五つ星の人のサービスのホテルが良いでしょう。しかし、そこまでサービスがよくなくても、泊まり心地がよければコストが安い方が良いと言う方、そういう三つ星?四つ星クラスを求められているお客さまは、ロボットホテルでいいでしょう。ただ、ロボットと言っても、結構いろいろな動作をしますから、楽しんでいただけると思います」
―― ベットメイクもロボットで?
「ベットメイクは人がやります。研究していますがロボットではまだできません」
―― 機械化、標準化ではどこと組まれたのですか?
「いろんなメーカーと組んでいます。荷物を預けるのはアームロボットです。安川電機に注文して作ってもらった産業用ロボットを使っています。フロントのロボットは博物館に入っていたロボットに頭脳を入れて使ったりしています。荷物を運ぶロボットは、ある電機メーカーに作っていただきました。客室內にはチューリーロボットです。明日の天気はと、口頭でたずねたり、モーニングコールの時間を口で言ったらセットできる。これの共同開発に、いろんなメーカーや研究機関と組んでいます」
―― そういうのは澤田さんが直接注文したのですか?
「ウチはチームを組んでやります。毎月1回、ロボットホテルのミーティングをして各メーカーさんと、皆で相談しながら約2年かけて作ったのです。構想から言えば3年です。まだ、50點ぐらいですね。変なホテルは今もすごく人気がありますが、將來はもっと面白くなると思います。ロビーでロボットがピアノ弾いているとか。エンターテインメントも入れて行きたいと思いますね」
―― ハウステンボス以外にも展開しますか。
「しょっちゅう故障していたら使えませんから、1年間の実踐的な実験をやって、問題ないのを確認します。本當に少人數でやれるようになったら、世界展開します」
―― 國內でなく世界ですか。何軒くらいをめざしますか。
「もちろん國內からやりますけど、いずれは200~500 軒くらいですね。今3つのホテルで40億円ぐらい稼いでいるのです。1つのロボットホテルで、4億円は稼げるとみているのですが、まあ堅く見て半分としても2億円です。その2億円のホテルを200~500作ったら400~1000億円の利益じゃないですか。世界一生産性が高いですから、競爭力があります。サービスが良いのに普通なら1萬5000円のホテルに1萬円で泊まれたら、競爭力はあるじゃないですか。そういう喜んでいただけるホテル革命をやりたいのです」 (構成?角田裕育)
■土屋直也(つちや?なおや)1961年4月20日生まれ。元日経新聞記者。主にバブル後の金融システム問題を日銀クラブキャップとして擔當、バブル崩壊の起點となった1991年の損失補てん問題で「損補てん先リスト」をスクープし、新聞協會賞を受賞。ロンドン駐在、ニューヨーク駐在を経験。2014年7月 ソクラ創設のため、日本経済新聞を退職
聞き手はソクラ編集長、土屋直也