ロボットはどこまでマンパワーに置き換わるのか。安川電機の産業用ロボット「MOTOMAN(モートマン)」の元開発メンバーで、現在は、公益財団法人?北九州産業學術推進機構(FAIS)のロボット技術センター長を務める善甫英治(ぜんぽ?ひではる)氏に聞いた。 -どこまで進化したのか。 モートマンの発売は1977年にさかのぼる。國內初の全電気式産業用ロボットで、當時は、自動車部品などの溶接がほとんどだった。しかし、それが今では産業用ロボットに仕事を教えるティーチングが簡単になり、2010年ごろからは、人工知能(AI)の開発で、人間の「五感」に及ぶまでになった。 -具體的には。 例えば、タイルの検品。ベルトコンベヤーに流れる完成品をカメラで撮影し、畫像処理裝置で解析する。色ムラがあったり、角が欠けたりした不良品を見つけ、アームロボットで取り除くこともできる。 -ロボットの方が優れているのか。 そうだ。人間だと、擔當者によって(検品の)基準が変わったり、その日の體調によってムラができたりする恐れがある。長時間労働も無理だ。しかし、ロボットなら、均質に、24時間働くことができる。単純労働や、危険な作業から人間を解放してくれる。 -政府が「ロボット新戦略」をつくった。 今は、ロボット化の「第3の波」が來ている。最初の波は1980年代の初め。大手自動車メーカーが溶接や塗裝を自動化した。2000年代初めには第2の波が來た。半導體搬送裝置など電子部品や家電の製造で自動化が進んだ。 -第3の波はどんなものか。 中小企業の製造現場や介護施設など、これまでロボットの導入が進んでこなかった分野に導入していこうというものだ。生産性が大幅に高まる可能性がある。 -なぜ。 背景は大きく二つある。一つは、高齢化だ。ものづくりの現場では、多くの職人が退職し、労働人口の減少が避けられない。技能伝承も簡単ではなくなる。 もう一つは、グローバル競爭。ドイツが進める「インダストリー4?0」は、中小企業にもロボットを導入し、工場をネットでつないで効率を上げ、競爭力を底上げするのが狙いだ。米國も、インターネットやセンサーを駆使した「インダストリアル?インターネット」(産業のインターネット)で、製造業の國內回帰を目指す。日本もうかうかしていられない。 -日本の中小企業は遅れているのか。 そう。例えば、北九州市が2012年に中小企業600社を対象に実施したロボット導入に関するアンケート。回答した139社のうち、「導入済み」は11?6%にとどまり、「検討もしたことがない」は79?0%に上った。 -どうすればいいか。 日本が競爭力を高めるには、ものづくりの「裾野」となる中小企業対策が欠かせない。生産年齢人口の減少は避けられず、ドイツのように、國策として普及を後押しする必要がある。 北九州市の場合、ものづくりが基盤ながら、高齢化は政令市でトップ。ロボット導入が喫緊の課題になっている。ロボット技術センターでは、大手メーカーでロボット導入に攜わったOB2人をコーディネーターとして地場中小企業に派遣。工場を診斷し、最適なロボット導入を助言している。市も補助金を出して普及を後押ししている。こうした取り組みを広げていくことだ。 ■善甫英治(ぜんぽ?ひではる)氏。1951年3月生まれの64歳。山口県宇部市出身。山口大大學院生産機械工學研究科を修了後、1975年4月、當時の安川電機製作所(現安川電機)入社。モートマンの開発メンバーに。2010年3月、同社を退職し、FAISに入り、15年4月から現職。